こういうのはプロに頼むべきだ。
電波が悪いと言われて屋上のアンテナを見に来たものの、目につく異常はなかった。
とりあえず、ちょんちょんとアンテナに触っておく。これで直るとは思ってないけど。
戻ったら業者に連絡しないとなぁ。
不意に声をかけられ、身を乗り出して声の主を見る。
雲雀がいつもの無表情でこちらを見上げていた。
「死ぬつもりなの?」
「あはは…死にませんけど」
屋上の、梯子を登ったさらに上。
まさしく一番高い所でうずくまってたら、そりゃ不審がられるか。思わず苦笑いする。
「君がいないと困る」
「部屋が汚い」
あの一件以来、少し雲雀さんが怖くなってしまって、距離を置いていた。
部屋の掃除もしてない。こうして顔を合わせるのは久しぶりだった。
「…いつまでそこにいるの?」
「降りるので、向こうむいててくれませんか」
意図を理解したのか、素直に背を向けてくれてホッとした。あのままではスカートの中が丸見えなのだ。
私が地に足をつけると雲雀は向き直り、じっと伺うように見つめる。
そして手を持ち上げると、親指の腹でそっと頬を擦ったのだ。
「よかった」
柔らかく笑んだ表情に、くらりと眩暈がする。
何がよかったのだろう。よくわからない。
「仕事がたくさんあるんだ。頼もうとしても君が逃げるから」
「…ごめんなさい」
他の人ではなく、信頼してるからと私に仕事を寄越すのは今も変わらないらしい。その事実に少し嬉しくなった。
着いてこいと雲雀が歩き出したので、後に続く。
纏う空気が柔らかく感じる彼を追いかけながら、頭の中でスケジュールを組み直していた。
山本による延命は、もう行われていない。
私達の関係は、以前と何にも変わってない。
ただ、わだかまりがとけて、前を向けるようになっただけ。
たぶん、これからもずっと変わらないと思う。