甘い
彼女を胸に抱き寄せれば、ふわりと甘い香りが舞う。
くどい女物の香水でもなくて、お菓子の香りとも違う。ほのかに香る、安らぎすら覚える甘いもの。これはなんだろう。
首元に鼻を寄せて思案していると、犬みたいだと彼女が笑う。
それに少しむっとして、甘く香る女のやわい肌に歯を立てた。
犬による牽制で、彼女が静かになった。これでいい。
恋人を抱え直し、その温かな体温を心地良く思いながら瞳を閉じる。
彼女を布団に招き入れると、いつも甘い香りで満たされる。案外、それが好きだったりもする。
「甘い香りがするけど、何の匂い?」
「えっ、香水とか付けてませんし…シャンプーかな?柔軟剤?」
「どれも違う」
彼女が腕を持ち上げて自身の匂いを嗅いでいる。
シャンプーではない。あれは明らかに香料だから分かる。柔軟剤なら自分からも匂うはずだ。
うなじから掻き上げるようにして彼女の髪を梳かしながら、香りの正体を探る。
すると、彼女は何か気付いたのか、僕の顔を見て固まってしまった。
「なに」
「いや…あの……」
顔を赤くして、もぞもぞと布団に潜ってしまう。
「なに?」
僕の胸に身体を寄せ、大きく呼吸している。
しばらく無言が続いてぽつりと「私も雲雀さんの匂い…好きですよ」と呟いた。
後で問いただしたところ、良い匂いと感じる相手とは身体の相性がいいんだと言っていた。
だろうね。