「美味い店、知ってんだよ」
にこやかに笑う山本の隣を歩きながら、「へえ」と生返事をする。
休日にわざわざ、メンタルがどん底の面倒な女を連れ歩くなんて、お人好しというかなんというか。
山本は優しい。それは学生時代から変わらない。
こうして中学からの腐れ縁の私を気に掛けてくれるのだから。
腐れ縁といえば雲雀さんもそうだ。私は風紀委員に入り浸っていた。雑用として。
…ああ、また雲雀さんのことを考えてしまった。辛くなるだけだから嫌なのに。
「お、ここだ」
山本の弾んだ声。視線を辿るとパンケーキのお店だった。かなり意外。
「山本がパンケーキ…」
「有名なんだってさ」
予約してくれたのか、すんなりと席に通された。
テーブルに置かれたメニューを開き、視線を落とす。
食事しても味がしないのだ。選ぶ気力もなく、ただぼんやりと眺めていると、向かいに座った山本に引ったくられた。
ウキウキと印刷されたパンケーキを物色する山本に、やはり意外な一面があったものだと考えていた。ほら、寿司ってイメージがあるから。
店員にこれとこれとと伝え、運ばれてきたパンケーキに眉を寄せる。
「いや、重いでしょ、これ」
クリーム盛り盛りの、チョコソース増し増しの、フルーツ添え。
対して山本は、シンプルなメープルがけのものだった。
「ははは、オススメって書いてあったから」
はあ、と小さく溜め息をつく。ナイフで小さく切り、一口放り込んだ。
「……美味しい」
ほんのり甘さが口に広がって。やっぱりパンケーキは美味しい。
久しぶりに生きた心地がして、胸が少し熱くなった。
「よかった」
次のパンケーキを切り分けている私を見て、山本は目を細めて小さく呟いた。
「クリーム一山あげるよ」
「いやー、俺はいいや」
頼んだのはあなたでしょうが。
相手の皿にクリームを乗せると、山本は困ったように、でも愉快そうに笑った。