山本に命を繋がれている。
来週もまたその来週も、と出掛ける予定を入れられ、なんだかんだ生きることになってしまった。
「出ない…」
携帯を耳に当てながら、ボンゴレの廊下をつかつか歩く。
至急頼む、と仕事を寄越してきたのはそっちではないか。
やだな、会いたくないなぁ。
依頼主の執務室の前に立ち、大きく息を吸う。
携帯をしまい、ノックの後カードキーを差した。
雲雀はソファで寝ていた。常にギラつかせてる眼光が閉じられ、端正な顔立ちも相まって、その無防備な寝顔は私の胸を締め付ける。
「雲雀さん」
どんな小さな音でも目を覚ますのだ、ノックした時点で起きているに違いない。
声をかければ、思った通りぱちっと目を開けた。
無表情のまま、何かを窺うようにじっと私の顔を見る。
吸い込まれそうな灰色の瞳は、何を考えているのかよくわからない。
「これ、頼まれていたものです」
データはメールで送りました。あれとあれは手配済みで…
全て報告すると、うんと呟いた。
「では、失礼します」
背を向けて歩き出そうとした時、「ねえ」と呼び止められた。
早くここから去りたいのに。
「元気ないね」
それをあなたが言うか…!カッと顔が熱くなる。なんて酷い男だ。
震える拳を必死に抑える私をよそに、雲雀はおもむろに立ち上がり、備え付けの小さな冷蔵庫を開けた。
「これ、持っていくといい」
そう言って渡されたのは、控えめだけど上品な装丁が施されたケーキの箱だった。
私が好きな駅前のお店のだ。びっくりして思わず、ずっしり重い箱を凝視してしまった。
反応の薄い私に、雲雀は首を傾げる。
「君、好きだろ」
ずるい。なんで優しくするかなぁ。
余計辛くなるから、放っておいてほしいのに。
私が好きなもの覚えてくれてたんだなって、嬉しくなっちゃうじゃん。
「ありがとうございます」
小さく礼を述べ、部屋を後にする。
嬉しいやら悲しいやらで心がぐちゃぐちゃだ。
ケーキ達に罪はない。家に帰って美味しくいただいた。