子供や学生が楽しそうにはしゃぐ園内は、沈んだ心とは裏腹にキラキラ輝いていて、その賑やかさに圧倒される。
テーマパークの入口で俯いたまま動かない私にそっと手を伸ばし、山本は優しく背中をさすった。


「わり、ここはちょっと厳しかったか?」


山本は優しい。私が元気になるよう、女子が好きそうなものを調べて、連れてってくれてることに気付いてた。
死のうとした理由を聞こうともせず、さも山本のわがままで連れ回してるかのように振る舞ってることも。

その気持ちはすごく嬉しい。だけど、原因の解決にはならないし、なにより心が追い付かないのだ。


「……ごめんね、少し待ってくれる?」
「ん、あんま無理すんなよ」


他の所にするか、と山本が言い掛けた時、うさぎの着ぐるみがトコトコとやってきた。
心配そうな仕草で私の顔を覗き込んだ後、手に持っていた風船をあげるよと無理矢理持たされた。
周囲を見ると、他にも風船が小さい子の頭上でぷかぷかしてて、なんか恥ずかしくなった。大の大人なのに。


「ははは、似合う!かわいいかわいい!」
「山本、それ褒めてないよね」


満足げに去ってゆく うさぎの後ろ姿を恨めしく見送りながら、小さく息を吐く。
うん、少し楽になったかも。
山本は穏やかに目を細めると、おもむろに私の手を握り、引っ張りながら歩き出した。


「せっかく来たんだし、少し見てこうぜ」


しょうがないな、付き合ってあげるよ。山本に連れ回されることにした。




「ははっ、すっげえ情けねえ声だった!」
「う、うるさいなぁ」
「ほら見ろよ、変な顔」



画面に写っているのは、ジェットコースターが落ちる最中を撮影した写真。
それを指差してゲラゲラ笑う山本を置いて、一足先にアトラクションの外に出た。


「悪かったって」


ニヤつきながら言われても説得力に欠けるものだ。
使わないと筋力が落ちるのは喉も例外ではないようで、途切れ途切れの奇声を発するという醜態を晒してしまった。

久しぶりに大声を出しただけあって、少しモヤモヤが晴れたような気がする。
じんわりと温かい胸に手を当てながら、ゆっくり深呼吸する。心が軽い。


「山本」
「ん?」


隣を歩く山本が、名を呼ばれ首を傾げる。
私の表情が穏やかなことに安心したかように、男は目を細めた。

度々向けられる眼差しに孕む "何か" を、私は知ってしまった。
それに気付かないフリをして、心からの本心を伝える。


「ありがとう」


大きく開かれた瞳が、すぐに逸らされる。
にかーと笑うと、私の頭をわしゃわしゃ撫でてきた。


「さっきのは冗談、あんたは可愛いよ」
「へへ、冗談でもありがとう」


髪を撫でるように手が離れていく。
その手に溺れてしまえば、どんなに楽だろうか。

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