「もう体調はいいんだね?」
「はい、お陰様で」


彼の薄い唇がゆるやかに弧を描き、首を傾げ問う。
改まって何だろう?と疑問に思いながら、次の言動を待つ。


「そう、ならいいよね」
「何が?」
「夫婦の営み」


思わずむせてしまった。
いやいや、確かに結婚しているのだから、そういうこともするだろう。
彼だって男なのだ。長らくお預けをくらっていたに違いない。だけど!

彼は口角を上げたまま、のそりとベッドに上がり、鋭い眼光で獲物を見下ろす。
ばくばくばく。心臓が慌ただしく動き出した。


「ま、待ってください!せめて電気を…!」





「うっ……あ、」


待って待って!痛い痛い痛い!
静止の声すら出せず、口をぱくぱくさせるので精一杯で、ただただ揺さぶられ続けていた。


「ああ…久しぶりだから痛いかもね」


そんな呑気なレベルじゃない!
ぽろぽろと溢れ落ちる涙を指で掬いながら、彼は他人事のように呟く。
何かがおかしい!はっきりとした違和感を、この時 身を持って感じた。


「大丈夫、すぐ良くなるよ」


上から見下ろして私の反応を見ながら、ある箇所にぐっとそれを押し付けた。


「ここ?気持ち良いね」


強い圧迫感に顔が歪む。痛いのか気持ち良いのかわからなくなってきた。
痛いと気持ち良いは紙一重だと言う。なら、これは気持ち良いのかもしれない。


「はっ……」


口をこじ開け、ざらりと温かいものが入ってくる。互いが混ざり合い、酸素を奪われ、頭がくらくらしてくる。
たぶん、気持ち良い。これは気持ち良いんだ。

律動が早まり、口から漏れる呻き声も大きくなる。
彼の呼吸も荒くなっていて、余裕のなさそうな顔で私を見ていた。


「…っ!」


顔が近付いたと思ったら、彼は首筋にがぶりと噛み付いたのだ。まるで捕食されてるかのよう。
そのまま中のものが大きく脈打ち、何かが放たれる。
彼のくぐもった熱い吐息が耳に直接入ってくる。

終わったんだ。ぐったりと力が抜けて、呆けたように天井を見つめる。
首筋を這うぬるりと温かい感触を、無意識に追った。


「…はあ、シャワー浴びようか」


満足そうに顔を上げると、彼は私を抱き起こしてそのまま持ち上げてしまった。
疲れて何も言えないのをいいことに、浴室へと歩いてゆく。


「雲雀さん…なんでそんな元気なんですか」
「ずっと待ってたからね」


清々しいほどの笑みを向けられ、何か嫌な予感がする。
まだまだ夜は長い。

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